2006年度例会

  第二十四回例会 コンサート 「シャンソンの夕べ」
      〜ルネサンス時代のシャンソンの変遷〜
 14世紀から16世紀までは、フランス語を歌詞とする多声のシャンソンが、王家や貴族の宮廷で盛んに歌われた時代だった。14世紀以来のシャンソンは、バラード、ロンドー、ヴィルレといった、詩と音楽を決まった形で結びつけた歌曲定型で作られたものが一般的で、15世紀には、ブルゴーニュ公国の宮廷を中心にこの形のシャンソンが愛好された。ブルゴーニュ公国の宮廷における最大の作曲家ジル・バンショワはその第一人者で、ここではその代表的なロンドーのひとつが歌われる。ブルゴーニュの宮廷文化の影響を受けながら、サヴォワ公国の宮廷やカンブレ大聖堂などで活躍した大作曲家ギョーム・デュファイも、ここで歌われるロンドーのように、歌曲定型によるシャンソンを多数残している。
 15世紀の終わりあたりから、多声のシャンソンの様式にも変化が現れる。フランスの王家音楽家として活躍したロワゼ・コンペールは、初めのうちは、ここで歌われるロンドーのように、伝統的な歌曲定型によるシャンソンを作曲したが、やがて自由形式によるものを手がけるようになる。15世紀の終わりから16世紀の初めにかけて活躍した、コンペールと同時代の大作曲家ジョスカン・デ・プレはより積極的に自由形式によるシャンソンを書いているが、ここで歌われる曲はその代表作である。

  16世紀前半に君臨したフランス王フランソワ1世の時代になると、イタリアのルネサンス文化の影響を強く受けたこともあって、多声シャンソンは大きく様変わりする。王家の宮廷詩人クレマン・マロが、新しい自由形式の詩を次々と生み出すと、その同僚の王室音楽家クローダン・ド・セルミジが、マロの詩に親しみ易い旋律とリズムで新しい音楽を作曲していった。最後に歌われるセルミジの3曲はその代表作だが、最後の2曲はマロの詩によっている。
24回例会
 セルミジによって開拓されていった新しいシャンソンは、パリの楽譜出版業者アテニャンによって出版されたことで、同時代の作曲家たちに大きな影響を与え、新しい自由形式のシャンソンが多くの作曲家たちの手で生まれ、それがまたアテニャンの手で出版されて広まっていった。フランソワ1世の詩に作曲されたとされるピエール・サンドランのここで歌われる曲はその代表作だが、何と言ってもこのジャンルの最大の作曲家はクレマン・ジャヌカンだろう。ここでは彼の初期のシャンソンのひとつが紹介される。

 16世紀の後半にも多声シャンソンが作られ続けるが、ギョーム・コストレはこの世代の重要な作曲家の1人で、ここで歌われる曲の詩を書いたピエール・ド・ロンサールもマロに続く世代の代表的な詩人として知られている。パリで活躍したジャン・プランソン、フランドル出身の作曲家トマ・クレキヨンの作品もそれぞれ紹介されるが、今日の演奏会では、このようにルネサンスのシャンソンの流れが展望できる。
(今谷和徳)
日時:
2006年10月28日(土)午後5時〜
会場:
東京オペラシティ・近江楽堂
演奏:
名倉亜矢子(ソプラノ)
永田斉子(ルネサンス・リュート、ルネサンス・ギター)
プログラム:
バンショワ:いつまでもやはり
Gilles BINCHOIS (c.1400-1460):De plus en plus
デュファイ:美しい方、私をあなたのしもべにしてほしい
Guillaume DUFAY (c.1400-1474):Belle,veullies moy retenir
コンペール:恋がそれほどうまくいかないのなら
Loyset COMPERE (c.1450-1518):Se mieulx ne vient d'amours
デ・プレ:はかりしれぬ悲しさ
Josquin de PREZ (c.1440-1521):Mille regrets
Josquin de PREZ/Pierre de PHALEYS編:Mille regrets(L-solo)
バンショワ:いつまでもやはり
Gilles BINCHOIS (c.1400-1460):De plus en plus
デュファイ:美しい方、私をあなたのしもべにしてほしい
Guillaume DUFAY (c.1400-1474):Belle,veullies moy retenir
コンペール:恋がそれほどうまくいかないのなら
Loyset COMPERE (c.1450-1518):Se mieulx ne vient d'amours
デ・プレ:はかりしれぬ悲しさ
Josquin de PREZ (c.1440-1521):Mille regrets
Josquin de PREZ/Pierre de PHALEYS編:Mille regrets(L-solo)
作者不詳/ファーレーズ編:運命よ、私の人生を歩むままにさせておくれ
ANON./Pierre de PHALEYS (c.1510-c.1573)編:Fortune laisse moy la vie (L-solo)
モルレイ:エコッスのブランル
Guillaume MORLAYE(1552-1558出版): Bransle d'Ecosse (L-solo)
ル・ロワ:パッサメッツォ〜ブルゴーニュのブランル〜ミラノ風舞曲
Adrian le ROY(c.1520-1560頃活躍):Passameze〜 Bransle de Bourgongne 〜
Milanoise (L-solo)
プランゾン/アドリアンセン編:うるわしき五月の朝露が
Jean PLANSON ( c.1559-1615 )/Emanuel ADRIAENSSEN編 (c.1554-1604):
La rousee de joly mois de May
作者不詳:美しいひとよ、もし君の心が
ANON.: Ma belle si ton ame
ル・ロワ & バラール編:
ピモントワーズ〜ファンタジー〜ブランル・ゲ"私が時を無駄にしていると気づいた時"
Adrian le ROY et Robert BALLARD (1551-1555出版):
Pimontoyse〜Fantasie〜Bransle Gay`Quand i'entens le perdu temps' (G-solo)
ゴルリエール & モルレイ編:ブッフォン〜パヴァーヌ〜ガイヤルド
Simon GORLIER et Guillaume MORLAYE (1551-1553出版):
Buffons〜Pavane〜Gaillarde (G-solo)
コストレー:喉元から、栄誉が押しつぶされると
Guillaume COSTELAY (c.1530-1606 ) : D'un gosier mache -laurier
ジャヌカン:この五月、新しいスカートを
Clement JANEQUIN(c.1485-1558): Ce mois de mai
リプ:足取りも乱れて
Albert de RIPPE (c.1500-1551):O passi sparsi(L-solo)
パラダン:またもや別れの時
Jean-Paul PALADIN (-1565-): Anchor che col partir(L-solo)
サンドラン:快い思い出
Pierre SANDRIN(c.1490-c.1560):Douce memoire
クレキヨン:わが目よ
Thomas CREQUILLON (c.1490-c.1557):Cessez, mes yeulx
アテニャン編:バスダンス"マッダレーナ"〜ラ・ロック〜パヴァーヌ〜ガイヤルド
Pierre ATTAIGNANT (c.1494-1551/52) 編:
Basse dance`La Magdalena'〜La roque 〜 Pavane〜 Gaillarde(L-solo)
セルミジ/アテニャン編:
美しい森へ / 助けて下さい、私の愛に免じて
私はあなたに楽しみをさしあげましょう / 恋をしたゆえ
青春時代に生きているかぎり
Claudin de SERMISY (c.1490-1562) )/Pierre ATTAIGNANT編:
Au joly boys / Secoures moy (L-solo)
Jouissance vous donnerai / D'estre amoureux (L-solo) / Tant que vivray
 

感想記

優雅で繊細
その中に澄んだ情熱のある音楽
純度の高い演奏に感動しました。
(男性)
主催:
NPO法人日本ルネサンス音楽普及協会
  第二十三回例会 公開セミナー 「ルネサンスのパトロンと音楽家たちY」
      〜英国チューダー家とスチュアート家の音楽活動〜
講師:
今谷和徳(早稲田大学講師)
日時:
2006年7月29日(土) 午後2時30分
会場:
ルーテル市ヶ谷センター会議室
・ミニコンサート
演奏:
米田 考(ルネサンス・リュート)
主催:
NPO法人日本ルネサンス音楽普及協会
 


  第二十二回例会 コンサート
      「放浪楽師と中世の世俗音楽」
  中世のヨーロッパでは、キリスト教の体制やその支配が人々の生活の隅々にまで浸透していて、人間の自然な感情の発露や伸び伸びした人生の享受が抑えられていたという考え方が支配的だった時代も有りました。そして、ヨーロッパ中世の音楽の歴史とは、キリスト教の音楽の歴史だという考え方が浸透していた時期も長く続いていました。
 しかし、どの民族や地域においてもそうであるように、ヨーロッパにおいても、人間としてのごく自然な生活は、いつの時代にも続けられており、その一断面と結び付いた喜びや悲しみが詩歌に詠われ、人々の集いで踊りが繰り広げられるといったような営みの途絶えることは有りませんでした。
  敢えて言えば、宗教音楽の創作活動が途絶えることは有っても、世俗音楽の創作・演奏活動が途絶えることは無かったのではないでしょうか。(断わるまでもないでしょうが、ここで言う"世俗"とは、言うまでも無く"俗っぽい"という意味ではなく、単に"非宗教的"という意味です。) 会報13号より抜粋(戸口幸策先生寄稿)
22回例会 ジョングルール・ボン・ミュジシャン

22回例会 ジョングルール・ボン・ミュジシャン

感想記
楽器の演奏するところがみれて
おもしろかったです。
語りや ダンスも すてきだし
パーカッションや リコーダー
バグパイプなどの めずらしい音が
生で聞けて たのしかったです。
(川崎市 女性)
日時:
2006年5月13日(土) 18:00〜
会場:
近江楽堂
演奏:
ジョングルール・ボン・ミュジシャン
「ジョングルール」とは仏語で放浪楽師の意味。20数種類に及ぶ古楽器、しかもバグパイプ、ハーディ・ガーディ、中世フィドルなど民衆の楽器を駆使し、中世・ルネサンスの主に大衆音楽を演奏。教会や宮廷の外で、放浪楽師たちが演奏し、民衆が楽しんでいたであろう音楽を、語り、芝居もからめた独自のスタイルで演奏している。
メンバー:辻 康介(バリトン、語り)
岡庭弥生(ソプラノ、踊り)
飯塚直子(リコーダー、パーカッション)
近藤治夫
  (バグパイプ、ハーディ・ガーディ)
演奏曲:
放浪楽師の音楽
 (中世ルネサンスの舞曲エスタンピー、ブランルほか)
吟遊詩人の音楽
 (トルバドゥール、トルヴェールなどの歌曲)
民衆起源の音楽
 (アルフォンソ賢王編「聖母マリアのカンティガ」ほか)
遍歴坊主の音楽(作者不詳「カルミナ・ブラーナ」ほか)
主催:
NPO法人 日本ルネサンス音楽普及協会

  第二十一回例会 公開セミナー 「ルネサンスのパトロンと音楽家たちX」
      〜ハプスブルク家〜
講師:
今谷和徳(早稲田大学講師)ルネサンス音楽史専攻
21回例会

日時:
2006年3月25日(土)午後2時30分〜
会場:
ルーテル市ヶ谷センター会議室 
・ミニコンサート
演奏:
五十嵐正明(ルネサンス・リュート)
主催:
NPO法人 日本ルネサンス音楽普及協会

21回例会演奏

当協会後援のコンサート(2006年度)   
(1)
メディチ家の夜会
〜ルネサンス古楽と美食の世界へのいざない〜
 
日時:2006年2月25日(土) 18:30
会場:ホテル西洋 銀座 3F 「サロン ラ ロンド」
共催:サヴォアール・ヴィーヴルサロン ロザリウム、ホテル西洋 銀座
後援:当協会の他、イタリア文化会館
(2)
トレチェントーイタリア・ルネサンスの春
 
日時:2006年4月20日(木) 19:00
会場:ハクジュ ホール
出演:ジル・フェルドマン(S)、ケース・ブッケ(R・Fid)
主催:アルケミスタ
後援:当協会の他、古楽コンクール山梨
(3)
目白バ・ロック音楽祭・6月2日(金)〜25日(日)
主催:目白バ・ロック音楽祭実行委員会
後援:当協会の他 新宿区 豊島区 文京区 スペイン大使館 経済産業省 
   東京都歴史文化財団 東京商工会議所新宿支部
(4)
ザビエル生誕500年記念コンサート
第一夜「ザビエル時代の音楽」
日時:6月22日(木)19:00
会場:聖パウロ教会
演奏:小野田良子(オルガン)、石井三栄子(メゾ・ソプラノ)、今谷和徳(講演)
主催:ミュージック・オフィス・田島
後援:当協会の他、スペイン大使館、横浜スペイン協会
第二夜「ビウエーラ曲集」
日時:9月21日(木)19:00
会場:聖パウロ教会
演奏:上島剛之助(ビウエーラ)、真野めぐみ(ハープ、ソプラノ)
主催:横浜スペイン協会
後援:当協会の他、スペイン大使館
第三夜「ザビエル時代のミサ曲」(当協会第二十五回例会ご参照)
共催:NPO法人日本ルネサンス音楽普及協会/横浜スペイン協会
後援:スペイン大使館


2005年度例会

  第二十回例会 「バッハへの道」
      〜独奏ヴァイオリンとリュートの共演〜
バッハが生まれる半世紀近く前にヴァイオリンの名手がドイツに居ました。
ビーバー、ヴァルター、ヴェストホフです。
彼らの技法はバッハのヴァイオリン独奏曲に大きく影響しました。
「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ」はどうでしょうか。
そして同時代、リュートでは敵わなかったヴァイスの作品は影響を与えているのでしょうか。

演奏会は ヴァイオリンを敢えてピリオド楽器ではなく表現の豊かなモダン楽器で、
通奏低音をテオルボという 珍しい組み合わせで、古楽的アプローチにより演奏しました。
日時:
2005年10月29日(土)午後3時
会場:
東京オペラシティ・近江楽堂
演奏:
塗矢真弥(ヴァイオリン)
田村仁良(バロック・リュート、テオルボ)
プログラム:
ビーバー
 無伴奏ヴァイオリンのためのパッサカリア
ヴェストホフ
 無伴奏ヴァイオリンのための組曲 第1番 イ短調
ヴァルター
 独奏ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ
ヴァイス
  ソナタヘ長調(リュート独奏)
 J.S.バッハ
  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調BWV1004
主催:
NPO法人 日本ルネサンス音楽普及協会
協力:
日本リュート協会

第20回例会第20回例会

感想記
入会してはじめてコンサートに参りました。近江楽堂もはじめてで、小規模のホールもまたはじめてでしたが、演奏者が身近でとてもよかったです。
バッハ・ビーバー:大変感動しました。
ヴァイス:とても現代的で軽やかで心地よかったです。
次回のコンサートもぜひ来たいと思います。
(千葉市 男性)

  第十九回例会 「ルネサンスのパトロンと音楽家たちW」
      〜ローマ教皇庁の音楽活動〜
日時:
2005年6月25日(土)  午後2時30分〜



感想記
歴代のローマ教皇と仕えた音楽家の関係が今谷先生の判り易い講義で少し理解出来、今後この時代の音楽を鑑賞するのに参考になると思う。 (目黒区 男性)
会場:
ルーテル市ヶ谷センター会議室
講師:
今谷和徳(早稲田大学講師)  ルネサンス音楽史専攻
演奏:
上島剛之助(ビウエラ) 
主催:
NPO法人 日本ルネサンス音楽普及協会
 


  第十八回例会 「見果てぬ夢の先」
      〜16,17世紀のスペイン鍵盤音楽〜
 ”絶妙な解釈、
溢れんばかりの詩情!
西山まりえ”

とスペイン最古の音楽雑誌「RITMO」75周年
記念号で絶賛されたスペイン鍵盤音楽を再現!

18回例会
日時:
2005年5月14日(土)午後3時開演
会場:
東京オペラシティ・近江楽堂
演奏:
西山まりえ(チェンバロ&ヴァージナル)
プログラム:
エルナンド・デ・カベソン「甘き想い出」
ヨハニス・カバニリェス「ガリャルダス」
アントニオ・デ・カベソン「騎士の歌によるディフェレンシアス」
ガブリエル・メナルト「第一旋法による両手のためのティエント」 他
主催:
NPO法人 日本ルネサンス音楽普及協会
後援:
スペイン大使館

18回例会
感想記
ピアノより少ない鍵盤の数で幅のある奥深い音色になるのが大変不思議であった。
最後の曲 ガリャルダス が、はげしさとなめらかさが調和していて、印象的だった。(匿名)

  第十七回例会 セミナー:「ルネサンスのパトロンと音楽家たちV」
      〜フィレンツェ/メディチ家の宮廷音楽〜
日時:
2005年3月26日(土) 午後2時30分〜

17回例会講義模様

感想記
メディチ家の音楽について、いろいろ本を読み勉強しましたが、ご講義は本で読むだけとは、大ちがいで、重要なことがたくさんわかりました。
ミニコンサートでは、ご講義の内容が具体的な音楽として味わうことができて、最高でした。 (日野市 女性)
会場:
ルーテル市ヶ谷センター会議室
講師:
今谷和徳(早稲田大学講師) ルネサンス音楽史専攻
演奏:
執行絵里(ルネサンス・リコーダー)
田村仁良(ルネサンス・リュート)
 

17回例会演奏風景

2004年以前のコンサート・セミナーの模様はこちら